Lake District Hiking trip [Day3]
この時期のイギリスは朝4時に夜が明けて日没は22時頃。1日をとにかく長く遊べる最高の季節だ。
Day3、この日は朝5時に歩き出したがすでに青々とした気持ちの良い空が広がっていた。
この2日間は当初の計画と予想に比べてわりとタフな行程できていたのもあって身体にも多少疲れを感じている。また今回は距離もタイムもあまり気にしないでまずはイギリスの大自然やフットパス文化を歩きながら感じたかったので無理にストイックに攻めなくてもいいだろう。ということで相方とも即決でこの日は「登山的」なコースを避けてアップダウンの少ない谷間を進むCumbria way というフットパスを約10km歩いてこの旅の最終目的地であるLangdaleという谷間の小さな集落を目指すことにした。
こういった谷間のルートを選んで体力的に楽に進む事もできるのが、標高の低い山々が連なるイギリスのハイキングの特徴のひとつかもしれない。
それにしても、この日のルートに選んだcumbriaway は期待していたよりもずっと美しくて感動的なトレイルだった。
移りゆく美しい谷間の景色を眺めながらのハイキングは山を歩いているのとはまた違った壮観さがあり、途中に何度も足を止めて目の前に見える絶景を眺めたり、自然と一歩一歩をゆっくりと味わうように歩いていた。 考えてみれば今までこんなふうに一歩を意識して歩くなんてことはあまりというかまったく無かったが、これは本当に贅沢な感覚だなと思う。
後で調べてみたらこのCumbriaway は1970年代に地元の有志によって考案されて2007年に正式なナショナルトレイルに認可された現在イギリスでも人気のフットパスらしい。
湖水地方の古典的な農村やレイクランドの景色を眺めながらスコットランド国境までの119kmを歩くルートで、確かにトレイルはこれまで歩いた山側よりもずっと整備されて歩きやすく、今回はわずか10km程のセクションハイクだったがそれでも十分過ぎるほど満足できる路だった。
とくに自分たちのような海外から来るハイカーにとっては、山だけではなく渓谷、川、農村や街までイギリスの特徴的な景色をこの119kmでほとんど味わいながら歩くことが出来るので、1週間程度の休みでも十分にイギリスのフットパスを堪能できる素晴らしいルートだなと思う。
公式サイトにも書いてあったがやはり標識は少ないので基本的な読図のスキルは必要だが基本的には水平移動がメインの体力的にはイージーな道なので、自分もいつか家族で歩いてみたい。
この日唯一のハイクアップだった標高450mの広くてなだらかなピークに立つと、眼下に美しい渓谷とそれ沿って続く自分達が歩いてきた路が一望できた。
今日の行程には有り余るほどの余裕もあるし、最終目的地であるパブのオープンも昼だからこのまま進んでもそこでただ待つことになるので、ならばここで昼寝でもしよう!ということなり、露で濡れたテントや寝袋を乾かしがてら暫し贅沢な昼寝することにした。心地よい風(まぁまぁ強めのイギリスらしい風)と自分達が歩いてきたトレイルを一望できる最高の景色を前に、時間を気にするなく昼寝を堪能した。(ちなみUK OMMの連中曰く、イギリスはテントサイト以外でのワイルドキャンプが認められていて、羊の放牧用の石垣より高いところであれば基本的に山の中はどこでもキャンプがOKらしい。)
15分くらい寝たかなと思って時計を見るとなんと1時間も爆睡していた!笑
これは人生ベストにランクインする最高の昼寝だった。
今回持ってきた寝袋はOMM Mountain Raid 1.0(385g)
じつは今回のハイキングで一番悩んだのがスリーピングシステムだった。
当初イギリスの天気予報は3日間とも雨や曇予報。
やはり2泊以上の行程でそのうちの1日でも悪天候になりそうな場合に、いちばん気になるのが寝袋の濡れや湿気による機能低下だと思う。
自分も寝袋のロフト低下が原因で、日程を切り上げて早めに下山したという経験は何度かあるが、OMMMountain Raid が良いのはそういった濡れによる機能低下の心配がないので、数日間の山行でなおかつ天気も怪しい今回のようなパターンのときに、確実に暖かく寝れるという保証のような安心感があるところだ。
また軽量化の面でも大きなアドバンテージがあり、今回のようにシングルウォールのシェルターの場合、雨よりもむしろ気になるのは幕についた結露に触れることでの濡れ。とくに足元は寝ているうちにテント後方に下がってしまっていつの間にか幕に触れて濡れていたなんてことは多い。一度部分的に濡れたシュラフは日中天気が良ければ干して復活させられるが、そうでなければ収納した際に湿度がシュラフ全体に回ってしまい夜にはけっこうなロフトの低下にがっかりすることがある。それを防ぐためにシェラフカバーや、エマージェンシービビーを使うことが多いが、以外にこれらは200g前後とまぁまぁの重量アップになる。それをOMM Mountain Raid を選択することでこれをまるまるカットできる。
というわけで、あれやこれや考えたが最終的にいつもの信頼のコイツ(OMM Mountain Raid 1.0 )を選んだが、実際この旅でも最低気温は8℃だったがダウンジャケット、ウールのタイツを着て寝れば十分暖かく過ごせたし、夜露や結露、雨の吹込みを気にすることなく寝れるのは快眠にも繋がった。
もちろんこのOMM Mountain Raidの他にも化繊系のシュラフはある。が当然化繊といっても様々な素材があり、やはりこのMountain Raidに使われているPRIMALOFT®社の最上級グレードであるPRIMALOFT® GOLDは群を抜いて暖かく、当然それに対する重量のバランスが優れている。
そういった意味で今のところ化繊シュラフでこいつ以上に良いと思えるものはあまり思いつかない。
そのままのんびりパッキングし直して残りの約5k弱の道のりを本当にゆっくりゆっくり歩いてパブオープンの5分前に到着。
完璧なタイムマネジメントを互いに讃えつつ、笑) オープンと同時にビールで乾杯してこの3日間の旅が終了。
今回の3日間のハイキングでは常に余裕を持ってのんびりと気ままに過ごしていた。終わってみればそれこそが今自分達が熱中しているファストパッキング、バイクパッキングなどのスタイルとの根本的な楽しみ方の違いなのかなと思った。時間にも心にも余裕を持って見える景色や風、その土地の文化を存分に感じながら時にゆっくりと軽快に気ままなペースで進むこと。そこには挑戦的なカッコ良さとかスタイル云々などは関係なくてただ純粋に自然の美しさや大きさを時間を気にせずに好きなだけ好きなように味わうことに尽きる。本当にシンプルでなんとも贅沢な遊び方に思える。
もちろん個人としてはこれからもチャレンジ的なことや精神的にあえて自分を追い込む遊びもまだまだ追及したい。同じことをやっていても自分の感じ方や考え方でまったく別の経験になるのがアウトドアの魅力だから、自分の遊び方(スタイル)はまだまだ研いていきたい。
ただ、そういうことも全部忘れてただただ地球を感じにいくということで歩くハイキングには、それでしか得られない経験もまた沢山あって本当に魅力的なんだと気がつくことが出来た。今回の旅中でも普段考えもしないようなことや、ちょっと凝り固まっていた思考がほぐれるような気付きなんかも沢山あったりして、いろいろな面で本当に良い旅だった。
遊び、仕事ともに冒険ばかりに打ち込んでちょっと身体も魂も疲れてきたら(笑)またこんなハイキングで心身をリセットしたい。笑