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Lake District Hiking trip [Day1]

ハイキングトリップ初日のスタートはあいにくの雨。。
現地の天気予報を見ても3日間とも曇雨みたいな感じでいまいちテンションが上がらないのだが、このままハイキングをやめて3日間の観光なんてもっとテンションが上がらないので、とりあえず行ってみましょうということで、車をGreat Langdaleという地域のOld Dungeon Ghyll Hotel の駐車場に停めて出発。ここはホテルでもあるがこのエリアから歩きだすハイカー達のパーキングとしてもよく使われている。駐車場も広くとても便利だし、最終日は帰ってからこのホテルのPUBで一杯飲むことも出来る。

Old Dungeon Ghyll Hotel とても雰囲気が良いテラスもあってそこで食事もできる。

出発してすぐに雨が強く降り出し、周りは完全にガスに包まれていく。景色もくそもないがとりあえず進む。
写真は千代田。この旅でセレクトしていたレインウエアはAXESQUIN (アクシーズクイン) アメノヒ2.5  とヘリテイジ TREMパンツ。アメノヒの膝くらいまである丈は、身体のなかで一番濡らしたくない臀部から腿にかけての部分をジャケットとパンツのダブルでカバーしてくれるので、見ていても羨ましくなるくらい安心感がありそうだった。ハイクアップでも膝に突っかかることもなく動きやすそうで、これは今回のような比較的コンデイションの悪い環境でも十分に使えるなと感じた。

自分は上下セットアップでOMM Kamleika Race SmockⅡ と Kamleika Pant を選んだ。カムレイカは自分の中ではもう毎回間違いなくセレクトする雨具になっている。とくに2日間以上の山となると選ぶ雨具もシビアになる。完全防水を謳うレインフェアでも半日くらいで浸水してビショビショになってしまうなんてことはザラにあるがこのカムレイカの信頼性は高い。今回も出来る限りハイクアップで汗をかかないように注意しながら歩いたりと気をつけてはいたが、それでも長時間しっかりと降る雨の中、ほぼ100%身体を濡れから守ってくれた。軽さ、防水性、着心地、どれをとっても素晴らしいパフォーマンスのレインウェアだ。

またKamleika Pant のゲイター機能も今回のハイキングでかなり活躍した。トレイルランニングやファストパッキングなど熱量の高いスタイルであれば靴の濡れはあまり気にならないのでむしろ防水性よりも通気性を重視したシューズ選びをするが、ハイキングはまったくそうではない。やはりドライな状態のほうが長い行程中ずっと快適に歩けるし当然湿気による足のトラブルも少ない。逆に靴の中がグショグショなのは当たり前だが不快極まりない。今回のシューズは防水性のあるゴアテックスのINOV8 / ROCLITE 286 GTX UNI というモデルをセレクトしたが防水性も透湿性も文句なし。そしてこのカムレイカパンツのゲイター機能がさらに雨垂れも防いでくれたので、別途ゲイターを使わなくても靴の中は常にドライな状態を保ってくれた。OMM プロダクトチームとしてはこれは雨対策というよりも当初はOMMレース中の泥対策の為に搭載した機能だと言うのだが、ハイキングであればこれは十分に雨対策としても機能すると思う。

ホテルをでて10分ほどは牧場の中のフットパスを歩く。前方に見える山の尾根を登って高度をあげながらこの日は西側の谷間に向かって縦走をする。

完全に人(牧場主)の土地の中。ゲートを開くといよいよハイクアップ。ここから一気に900mのBowfellという山の山頂までハイクアップする。

登りはじめは綺麗なトレイルで傾斜も緩く気持ちよく歩く。先行する3人組のパーティにプレッシャーにならないようにある程度の距離を保ったまま進む。

高度が上がるにつれて、次第にガスも濃くなり視界はほとんど無くなる。風も強まってきてなかなかタフな雰囲気にww ちなみにこの時の気温は8℃くらい。 まぁまぁ寒い。。

ハイクアップから約2時間半くらい、ひたすら真っ白な世界を登り続ける。中盤くらいで先行している3人組もどうやら自分たちと同じBowfellに向かっているんだなと気づき、そこからはただただ一定の距離を保ったまま3人組に着いていき(笑)ようやく目指す最初の頂であるBowfell山頂の最後の取り付きらしきところにたどり着く。既に先行の3人組は山頂に立っているようで自分たちもその声がする方に向かって登る。

頂らしき場所に3人組が小休止をしている。自分達も「さてさてここがBowfellなのかな?」と独標を探すがあたりを見てもそれらしきものはない。。相変わらずガスっているので視界はほぼないがこれがBowfellで間違いないような気がする。。(と言っても途中からただ先行グループを追ってここまで来ただけなのでその自信たる根拠はこの時点ではとくにない。笑)
と、ここでようやくあることに気づく。登山口からこの山頂までいっさいの標識を見なかったのだ。そう。イギリスの山にはまったく標識というものがない!なので山頂も分岐点も読図とナビゲーションが出来ないと自分の現在地を確認するすべが無いのでヤバいことになる。ということをこの900mの突風吹き荒れる山頂ではじめて知ったのである。。
休憩している3人組の1人に「ここはBowfellですか?」と聞くと「そうだよ。」との返事。その後に「君たちずっと僕らのあとを着いてきたよね。」と、ちょっと心配そうな感じで聞かれたので、「そうだね。ありがとう!」と軽くいなして(笑)「このあとは戻るの?」と聞くと、「そうだね。ラウンドして戻れるルートがあるからそれで帰るよ」とのこと。どうやらここでこのグループとはバイバイのようだ。
「僕らは西側の谷間のPUBを目指してるよ」と伝えて先に進む。3人組にあのアジア人達はほんとに大丈夫かななんて言われてんだろうなぁと思いながらも、ここでようやくコンパスを取り出して、慎重に現在地を確認しながら進む。何しろ視界はほぼゼロなので周りの景色から読み取れるヒントはほとんどない。頼れるのは地図とコンパスと自分のナビゲーションスキル。そしてガレた岩場に一定間隔で積まれているケルンだけ。

ただ、このあたりから今日のハイキングが急に楽しくなってくる。2人で良い緊張感をもちながら現在地、ルートを確認しあいながら確実に進んでいく。やはりただただ誰かについていってるだけと、アウトドアスキルを駆使しながら進むのでは断然後者のほうが楽しいに決まってる。「ようやく自分たちのハイキングが始まったな−」なんて話しながら軽快に進む。

こんな視界になると常にコンパスも必須でなかなか緊張感も高くてそれこそOMMそのもの。なるほどOMMという超変態なイベントがこの国で生まれた必然みたいのを妙に納得してしまった。

まったく視界のない中でこのケルンの存在は本当に心強い。ただしナビゲーションができないとやはりイギリスのハイキングはとても危険で難しい。

一旦稜線に上がるとそこからは吹き上げによる猛烈な風が絶えず吹き付けてくる。相変わらず視界もないそれこそOMM的なコンディション。こんな状況ではまともに休憩もとれないしとにかく体温が下がらないようにペースをあげて進むしかない。このときにはもう完全にスイッチが切り替わって、いつの間にか2人とも走れるところは走っている。(笑

軽快に進んでいると午後になってようやく少しだけ視界がひらけてきた。ちょうど稜線歩きが終わりこれから高度を下げていくところで、眼下に少しだけ山肌が見えてきた時は本当に感動した。標高こそわずか800m~900mの山々かもしれないが、実際に見えるそのスケール感はまったく日本の2000〜3000mにも引けをとらないくらい圧倒されるものがあった。
この頃には雨も上がっていて、少しだけど太陽の日差しが届くくらいに明るくなってきていた。時刻は1時半頃だったので下に見える気持ちの良さそうなコルで昼ご飯を食べることにする。

ようやくガスも引いてきて向こう側の山肌が見えるくらいに視界がひらけてきた。

羊たちと一緒にちょっと遅めの昼ご飯。風も上手くかわす絶好のポイントだった。

今回持ってきたクッキングシステムはif you have TiMNEY とPound Cupのセット。燃料は固形燃料を使った。Pound Cupはやはり450mlというサイズがとてもちょうどよくて使いやすい。だがやはり何よりも素晴らしいのがこのアイテムの名前のとおり、チムニー効果による燃焼力の高さによる圧倒的な沸騰時間の早さだ。じつは個人的にも固形燃料は軽くて携帯性もとても良いし量の計算も楽なので一番好きなクッキングシステムなのだが、唯一のネックが沸騰までの時間が長すぎることだった。冬場なんかだと10分近く待っても沸騰までいかないので待ちきれずにある程度お湯になった時点で注いだりもしていたが、この if you haveのシステムは本当に驚くくらいに沸騰が早い! 今回もあっという間に約250mlの水を沸騰させてくれたので、まったくストレスなく昼ご飯を食べることができた。

また今回はじめてULTRA LUNCHのビバークレーションをメインの食料に持ってきたのだが、これもまたお湯で戻してからわずか2分で食べられる早さが良い! やはり山でお腹ペコペコな状態だと1分でも早く食べたいという気持ちになるので、早く作れる、食べられるというのはとてもありがたい。そういった意味でもこのULTRA LUNCHのビバークレーションは山ご飯としてはかなり優秀だし、何よりこのパンチの効いた味付けは病みつきになる。笑 個人的にはこのトマトキック味が一番好みだ。

if you have TiMNEY /Pound Cupで、ULTRA LUNCHのビバークレーションを作った。ちょっと水多めで作ったが雑炊ぽく食べてもかなり美味い。  TiMNEYの沸騰時間は本当に早くて驚いた。これは本当に専門的な知識が設計に生かされた名品。一発で惚れ込んだ。

 

昼食を食べたら早々に動き出す。なにしろ今日の残す工程はイギリスで1番の絶景と言われているらしいLingmell山頂からWastwaterという湖に向かって降りるルートだけ。しかもタイミングよく天気も回復してきてる。途中雲が抜けて空が開けると圧倒的なスケールの景色が広がっていた。この800mの劇下りを降りきったところに今日の目的地であるWasdaleというキャンプサイト併設のパブがある。山々を繋いで1日の目的地を谷間にあるパブにするのがイギリスのハイキングスタイル。美味しいビールと食事とともに雰囲気も抜群のパブで今日の行程を振り返る、これは最高の1日の締めくくりかただなと思う。

Lingmellの山頂からWastwaterという湖に向かって降りるルート。噂通りの素晴らしい景色だった。(実はちょっとルートを外れてショートカットを試みているがやはり不整地は足にかかる負担が大きい!結果ここでドッと疲労を溜めることになる。笑) 下に見える建物が目指す目的地であるPUB。目前のように見えるがここから結局1時間近くかかった。何にもないのでとにかく距離感がつかみにくい。

ショートカットのつもりが、久々のイギリスの不整地の激下りにかなり体力をもっていかれ、ソコソコ良い疲労感でようやく初日の目的地 the wasdale head というパブに到着。イギリスのOMMチームの皆にもここはNICE PUBだよとオススメされたとおり、雰囲気も料理もビールもまさに三拍子揃ったナイスパブだった!

かっこいい看板がお出迎え。

PUBに到着。裏手は雰囲気の良いテラスになっている。

名前は忘れたけどラム肉の料理。柔らかくてとても美味しかった。イギリスのご飯はあまり美味しくないという日本人の話しをよく聞くけど自分はけっこうイギリスのご飯は好きだ。

店内はハイカーだけではなく、地元のおじちゃん、おばちゃんもいる感じでかなり賑わっていた。

テントサイトはこのパブの目の前のきれいな芝生の広場があり、すぐ隣りは羊の牧場だった。生まれたばかり子羊がよく様子を見にくるのでそれでまた癒される。今回持ってきた幕はsixmoon designsのHaven tarp cuben ver 。久しぶりに広さに余裕のあるテントの快適さに感動する。ここ数年はずっとビビーやミニマルなタープ、シェルターばかりだったが、やっぱり荷物も目一杯広げられて何も気にする事なく調理できるこういうテントは居心地が良くて良いもんだなと再確認できた。
とはいえこのHaven tarp cuben ver フライだけなら285g。めっちゃ軽い。

キャンプサイトは羊の放牧場のとなり。Haven tarp cuben ver は2人が悠々と過ごせる広さでフライのみであれば285gという恐ろしいくらいの超軽量テント。これはちょっとこれまでのミニマルスタイルを見直したくなるレベルの快適度だ。

ドアをオープンにするとさらに気持ちの良い風が抜けてくる。バックパック、靴を適当に置いても全然お構いなしのこの広々スペースはとても良い。着替えや、マット、寝袋等の出し入れもストレスゼロ! それと開放的なタープや、ものぐさ感溢れるなビビーもそれぞれ良さがあるのだが、テントのこの守られてる感というか、広い大地に自分だけのプライベート空間的な良さもまたいいなーと改めてテントの良さを実感しまくった。笑

PUBでのんびりご飯とビールを楽しんで時計を見ると20時。この時期のイギリスは日没が22時頃でまだまだ暗くなるまで時間はあったがもう身体はクタクタなのでさっさと寝袋に入っておやすみなさい。ということで天候の変化にも富んだなかなか充実した内容の1日目だった。

Lake District Hiking trip [Day2] へ続く